実践IoT(発刊:2018年9月)

サブタイトル 小規模システムの実装からはじめるIoT入門
著者 天野直紀

東京工科大学工学部電気電子工学科准教授

出版社(定価【税別】) オーム社(2,800円)
社内に電子工作の経験がある従業員がいれば、その方が本書を読むと、実証実験レベルのIoTはすぐに始めることができると思われる。筆者は「機械の振動による発報」、「斜面の傾斜の変化による発報」を自作のIoTで実施しており、この経験も大きく生かした上で本書は構成されたものとなっている。センサ、プロセッサ(ここでは「Arduino」「Raspberry Pi」などのマイコンボードの意味)、電源、通信、データの扱いなどについて必要とされる内容が網羅されており、これらの説明は「専門書的な表現ではない」ので、非常に理解しやすい。

サーバとして「Microsoft Azure」のクラウドサービスを用いていること、また、やや高度なデータ分析も行うことができればなお良しということで、「Microsoft Azure Machine Learning Studio」や統計プログラミングソフト「R」による機械学習(AIの一部)の説明もある。これらは小規模であれば無料で利用できるのでぜひトライしてもらいたい、との思いもあるのだろう。

筆者も述べているが、IoTは成果を事前に保証できないので、多段階に分割して導入すべきである。途中で中断するなどの失敗も経験しながら、小さな成功を積み重ねて、ブラッシュアップしていけば良いのである。また、本格的な開発、導入に至る際には、こうした自作での経験があるのに越したことはない。IoTは複数のセンサ類を扱う局地戦であるがゆえに、運用まで考慮するならば、自社がコミットできる領域は極力大きいことが理想だからである。(蔭西義輝)