第6回徳島IoT活用研究会を開催

2018年10月16日(火)、阿波銀行本店におきまして、徳島IoT活用研究会に加盟する県内企業、徳島県、阿波銀行の会員やオブザーバーを合わせ35名の出席のもと、「第6回徳島IoT活用研究会」を開催しました。

今回は、研究会メンバーの代表企業が実際に直面する業務上の課題をIoTにより解決することを目的として、同じくメンバーのIT事業者の方と議論していただくワークショップを行いました。具体的には、①代表企業の方が解決を図りたい業務を説明、②これについてIT事業者の方が提案し議論する、③他の参加者はこの模様を傍聴するとともに質問、意見なども述べる、という形態で、以下の2つのテーマに分けて進めました。

テーマ1 土砂災害危険箇所における低コストでのリアルタイム動態観測

(代表企業) ニタコンサルタント㈱ 取締役調査統括本部長 細川 洋二 氏

(IT事業者)㈱Skeed IoT事業部長 柴田 巧一 氏

1.土砂災害危険箇所における地盤などの観測の現状

ニタコンサルタントの細川氏から、同社が行政から委託を受けて担っているこの業務に関する背景や現状について以下の説明がありました。

 

土砂災害には「急傾斜地の崩壊」、「地滑り」、「土石流」があり、徳島県内では13,001の危険箇所がある。特に、急傾斜地崩壊は全国12番目、地滑りは同4番目、と多くの箇所が指定されている。近年、土砂災害発生件数は増加傾向にあり、住民に避難を促すための土砂災害情報の重要性が高まっている。

現行の土砂災害警戒判定の留意点としては、斜面の深層崩壊や山体の崩壊・地滑りなどは対象としていない、全国一律のパラメータを用い個々の植生・地質・風化などを考慮していない、実際の降水よりも遥かに強い「解析雨量」によって高い危険度の判定される場合がある、などが挙げられる。したがって、判定の精度に対する信頼度が十分ではなく、避難勧告・指示が発令されても避難しない住民は結構多い。

こうした危険箇所の観測には、坑内傾斜計、地盤伸縮計、雨量計、ウェブカメラなどを用いる。中山間地での設置がほとんどであることから、電源の確保やセンサー類、通信の整備などに高額の費用を要している。

こうしたことから、この業務には改善すべき課題が多い。運用の安定性を保ちつつもコストを下げること、観測箇所を増やし取得するデータ増加させること、このプラットホームや判定(予測)プログラムの開発につなげること、などを実現できないかと考えている。

2.課題の整理と解決に資する安価なセンサー、通信などについて

以上の説明を受け、Skeed柴田氏からはこの課題をわかりやすく整理するとともに、解決に適したセンサーや通信についての考え方が述べられ、議論が進められました。

 

述べられた課題を整理すると、「土砂災害の予知する精度を高めたい」と「デバイス、通信、運用などに掛かるコストを下げたい」の大きくは2つに分かれる。前者の予知精度の向上は、後者のコストを下げ観測箇所や種類を増やすことにより進めることと思われるので、まずは後者のコスト低減を考えたい。

装置そのものについて、1つの観測地点で数百万円とのことであるが、観測精度が高過ぎるもの(オーバースペック)になっているのではないか。通信は既存の携帯電話用を利用しているが、センサーで取得したデータを送るためにこのレベルのものが必要なのか。センサーから通信に至るまでの接続の仕方などは、もっと効率化できるのではないか。装置の点検などのために巡回しているが、省電力化やデータ取得の効率化ができれば、その頻度を減らせるのではないか。こうして考えると、コストを低下させる余地はかなりあると思われる。

センサーについては、傾斜計には加速度センサー、伸縮計には距離センサーが用いられる。秋葉原の電子部品販売業者の通販サイトを利用すると、前者はmmレベルの精度で1個数百円、後者も超音波で測るものが数百円で、それも1個から購入できる(実際のサイトを見ながら説明)。また、距離の測定には電磁波を用いた「LIDER」も使われるが、自動運転技術の進展などに伴って、1万円台から入手できるようになっている。他のセンサーも含め、こうした安価な部品を集めて、プロトタイプをつくって実験を始めてみてはどうか。

通信については、大量データの伝送には不向きだが、省電力のIoT向け通信である「LPWA(Low Power Wide Aria)」を用いると、大幅にコストダウンできると思われる。また、センサーとこうした通信機器などの接続には、「Bluetooth」の利用も考えられる。

以上から、1つの観測箇所に掛かる材料費は数万円であり、バッテリー交換などの電源維持や通信に関するコストもかなり安くできると思われる。手始めとして、プロトタイプを多くつくり、観測箇所を増やした上で、実証実験を行ってみることを勧める。

テーマ2 在庫管理、販売・出荷管理などでのIT/IoTによる業務効率化

(代表企業) ㈱ヨコタコーポレーション 事業開発室室長 横田 諒 氏

(IT事業者)㈱GTラボ 代表取締役社長 坂東 勇気 氏

1.同社が経営するリユースショップにおける在庫管理の現状

ヨコタコーポレーションの横田氏から、同社が経営するリユースショップにおける在庫管理について、以下の説明がありました。

 

中古品を買い取り、帳簿に記入し、販売する、という過程は、ほとんどが手管理で行われている。棚卸も同様で、従業員総出で時間をかけて1個1個数えている。正確であるか否かもよくわからない。POSなどの導入も検討したが、取り扱う商品が多岐にわたるため、レジの使用に留めている。

高額品には1個約600円の防犯用のタグを取り付けており、付けたままゲート(数十万円のコスト)を通るとアラームが鳴る仕掛けを導入している。このゲートは専用タグだけではなく、電線を所持して通過するだけでも鳴る場合があり、使い勝手はそう良くない。また、コスト面を考えると、低額品に装着する訳にはいかない。

こうした課題についてIoTを活用して何とか効率化できないか、との問題意識を持って今日のワークショップに臨んでいる。

2.RFIDシールを用いた在庫管理の実証実験の提案

以上の説明を受け、GTラボ坂東氏からは、RFIDシールを用いた小規模な実証実験から始める在庫管理の高度化について、さまざまな角度から提案が述べられました。

 

大規模な流通用の倉庫などにおける在庫管理には、1個100円程度のビーコンがよく用いられている。数十円レベルの商品も多く取り扱われるリユースショップには、これでも高いので不向きだ。そこで今回は、価格が低下してきているRFID(Radio Frequency Identifier)を用いることを提案したい。

たとえば、さまざまな通販サイトをみると(実際のサイトを呈示しながら)、○○○個のRFIDが□□□□□円、という形態で出品されている。早く送ってもらいたいのであれば、少々高くても別のサイトで購入してもいいと思う。これに加えて、リーダー(読み取り機)も購入する。

まずは、1つの棚から実験を始めたらよい。RFIDシールを商品に貼付し、そのIDと商品をコンピュータ上でひも付けすれば、セット完了。リーダーを持ってその棚の前を歩くだけで、棚にない商品はもう在庫ではない、ということが可視化されるのである。

これがうまくいくようになれば、実施範囲を少しずつ広げる。この間、協力してもらえるパートナーを見つけ、少しずつ費用を掛けながら、ソフト・ハードともに改善を繰り返し、使い勝手の良いものを目指しブラッシュアップしていく。最終的にはシステムそのものの外販を目指すべきであり、成功が見込めるようになれば、費用をかけてしっかりとした開発を行えばよいのではないか。

繰り返しになるが、実証実験は絶対に必要である。思いもしないような理由で、データをうまく取得できないことが往々にしてあるからだ。失敗とこれに対する改善の繰り返しこそが、ITの開発には重要である。

 

以上の議論においては、他の参加者からも随時質問がなされるなど、活発なワークショップが進められました。また、IoT導入の実際について、具体的なイメージを持っていただくこともできたと考えております。

今後は、上記の議論の具現化を目指し、プロトタイプの製作や現場での設置などの動きにつなげていくため、強力にバックアップしていく予定です。